月光の曲

出典: 愛LoveJp提供 クラシック音楽の愉しみ方

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン「月光の曲」(1770-1827 ドイツ)

 「月光の曲」はベートーヴェンのピアノ曲のなかでも名曲中の名曲です。30歳のとき、恋人であったジュリエッタ・グイチャルディに捧げた曲であるとされています。この曲には、昔の教科書にも載っていた有名なエピソードがあります。夜道を歩いていたベートーヴェンは、ふとある家の前でたちどまりました。その家のなかからピアノの音が聞こえたからです。家の中を覗くと、目の不自由な美しい少女が、月の光がさしこむ部屋でピアノを弾いていました。その光景に触発されたベートーヴェンが、少女のピアノの前に座り、この曲を演奏したという話です。

 実話ではないのですが、あまりにも美しい曲だけに本当のことのような気もしてきます。夜、美しい少女、月の光、盲目という逆境に立ち向かう姿勢、確かにそういったものを感じる曲であります。

 しかしこのエピソードには真実を捕らえている側面もあります。先に、ベートーヴェンが古典派とロマン派の橋渡しをしたと述べましたが、これは別の見方をすると宮廷とか寺院といった勢力者のための音楽から、一般聴衆のための音楽への移りかわるという、時代の変化を象徴する話だともいえるわけです。

 ベートーヴェンは盲目の少女のために作曲したのではないかもしれませんが、庶民のために作曲したのであって、貴族や金持ちのための作曲ではなかったことは事実であると思われます。